日弁連による顧問弁護士利用のためのコンプライアンス・チェックシートの公表

1. はじめに

 2022年12月6日、日本弁護士連合会(以下「日弁連」といいます。)は、顧問弁護士利用のためのコンプライアンス・チェックシート(以下「本チェックシート」といいます。)を公表しました(https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/activity/improvement/reform/komon_bengoshi_check_sheet.pdf)。

 本チェックシートは、弁護士が各企業の経営を支える手伝いを行うことができるよう、どのような場面で顧問弁護士が役に立つことができるかを分かりやすく説明するツールとして作成されたものです。全60問の質問で構成されており、その回答結果に応じて、顧問契約の締結や弁護士への相談等を行うことを推奨しています。

 私も全く同感なのですが、日弁連によれば、弁護士が依頼を受ける事案の中には、「もっと早く弁護士が関与していれば、こんな法的トラブルに巻き込まれることはなかったのではないか」との感想を抱くことが少なくなく、会社・個人事業者の皆様が、経営に関する法的トラブルの可能性に気付く「きっかけ」となるよう本チェックシートを作成したとのことです。

 以下、本チェックシートの概要について説明したいと思います。

2. 本チェックシートの具体的内容

 本チェックシートは以下の3つのステージから構成されています。

ステージ1:大きなトラブルに遭わないための基本事項のチェック
ステージ2:企業の体制を充実させるための基本事項のチェック
ステージ3:事業展開のための弁護士の積極的活用方法のチェック

 そして、各ステージは、それぞれ、(1) 会社の組織に関するルール、(2) 従業員に関する職場のルール、(3) 取引先との間の取引上のルール、(4) ITや知財などの新しいルール、(5) 弁護士との関係の築き方という5つのテーマからなる全20問の質問から構成されています。

 ステージ1は、「株主が誰か、よくわからない」(Q1)や「取引の際にわざわざ契約書を作成しないことが多い」(Q11)といった不要な法的トラブルを回避するための基本的事項に関するチェック項目であり、そのうち5つ以上が該当する場合、弁護士との顧問契約の締結を検討すべきとしています。

 ステージ2は、「会社に取締役会はあるが、実際には会議をしていない」(Q24)や「取引先と契約書を交わしても条項を確認することがない」(Q31)といった企業のガバナンス体制を充実させるためのチェック項目であり、そのうち5つ以上が該当する場合、弁護士に相談の上、体制の充実を目指すべきとしています。

 ステージ3は、「社外取締役・社外監査役の設置について検討したことがない」(Q43)や「取引先が用意した契約書について、取引先に修正を求めたことがない」(Q51)といった企業のより一層の事業展開へ向けたチェック項目であり、該当するもののうち興味があるものについて、弁護士へ相談することを促しています。

3. 終わりに

 現状顧問弁護士を持たれていない企業の皆様におかれましては、本チェックシートをご活用いただき、顧問弁護士の要否について検討されてはいかがでしょうか。また、既に顧問弁護士を持たれている企業の皆様においても、同様に本チェックシートをご活用いただき、顧問弁護士への相談が必要な事項の有無について確認されてはいかがでしょうか。

 当事務所では、顧問弁護士対応の他、各種企業法務を幅広く取り扱っております。ご相談等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

法律事務所かがやき
弁護士 吉田 勇輝