嫡出推定等の見直しに関する民法改正

 皆様こんにちは、弁護士の吉田勇輝です。法律事務所かがやきのウェブサイトにお越しいただきありがとうございます。今回のトピックは、嫡出推定等の見直しに関する民法改正についてです。

1. はじめに

 2022年12月10日、生まれた子の法律上の父親の推定に関する「嫡出推定」の規定につき、明治29年(1896年)の現民法の施行以降初めて見直す民法の改正法が成立しました。一部の規定を除き、2024年6月頃までに施行される予定です。

 今回は、その改正内容について説明したいと思います。

2. 嫡出推定と再婚禁止期間

 現行の民法上、離婚から300日以内に生まれた子どもは、前夫の子どもと推定されます。また、その後再婚した場合において、再婚から200日経過後に生まれた子どもは、再婚した夫の子どもと推定されます(なお、初婚の場合も同様に、結婚から200日経過後に生まれた子どもは、夫の子どもと推定されます。)。そして、両者の推定が重複し、どちらの子どもか決定できなくなることを避けるため、女性には、離婚後100日間の再婚禁止期間が設けられています(下図参照)。

 そのため、離婚から300日以内に子どもが生まれ、出生届を提出した場合、仮に他の男性との間の子であっても、前夫の子として戸籍に記載されることになります。したがって、これを避けたい母親が出生届を提出せず、無戸籍の子どもが生じる一因となっていると指摘されていました。

3. 改正法の内容

 このような問題点を踏まえ、改正後の民法では、上記の嫡出推定の規定を見直し、母親が再婚した後に生まれた子どもについては、たとえ離婚から300日以内に生まれた場合であっても、再婚した夫の子どもと推定されることになります(上図参照)。これによって、法律上の父親が重複する可能性がなくなることから、女性の再婚禁止期間についても廃止されました。

 また、嫡出推定による父親と子どもとの関係を解消するための「嫡出否認」の手続について、現行法上は、父親にのみ申立ての権利が認められていますが、改正法では、子どもと母親の側からもそのような申立てができることとしています。また、嫡出否認の訴えについて、現行法上は、1年以内に訴えを提起する必要があるところ、改正法では、その期間を3年に延長しています。

 これらに加え、改正法では、親権者に子どもを戒めることを認める「懲戒権」について、児童虐待を正当化する口実に使われる場合があることなどから、削除しています。また、体罰や子どもの健全な発達に有害な言動についても許されない旨が新たに明記されました。

4. 終わりに

 以上のとおり、改正法の内容は、親子関係に関する民法の規定を大きく変更するものであり、実務に与える影響も非常に大きいと考えられます。

 当事務所では、親子問題や離婚問題を始めとするあらゆる家事事件について幅広く取り扱っております。ご相談等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

法律事務所かがやき
弁護士 吉田 勇輝